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なっちゃんの
クリスマスの願いごと
あなたにおくる おはなしのほん
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夏目 漱石 さま
メリークリスマス!
これは あなたのために特別に作られた本です。
すばらしい作品をありがとう。
1910年12月25日
お父さん・お母さん より |
「今年のクリスマスプレゼントはどうしよう?」
25歳のなっちゃんは ため息をつきました。
世の中はクリスマスムード一色。
街はうきたつような空気に包まれています。
でも なっちゃんの目下の悩みは、
宮沢賢治と、森鴎外と、川端康成への
クリスマスプレゼントが
きまらないことなのです。
部屋に飾られたクリスマスツリーを眺めながら、
なっちゃんは 25回目のため息をつきました。 |
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幼い頃、クリスマスの朝には、
プレゼントがいつも枕元に置かれていました。
でもなっちゃんは、もう自分でプレゼントを
探しにいかなければならないのです。
『電話一本、30分でお届け』してくれる、
ピザ屋みたいなサンタクロースはいないかなあ。
プレゼントのことを考えすぎて、
なっちゃんの頭はオーバーヒート気味!
そのときでした。
郵便受けがコトリ、と小さな音をたてたのは。 |
郵便受けをのぞくと、見慣れない模様をあしらった、
一通の手紙が入っていました。
そこには消印も、愛媛県 松山市の
なっちゃんの住所もありません。
ただ、『夏目 漱石様』という文字があるだけです。
封を切ったなっちゃんは驚きました。
そこには、こんな文章があったのです。
夏目 漱石 様
わしはサンタクロース。
クリスマスももうすぐじゃが、いかがお過ごしかな。
サンタクロース??
なっちゃんの頭はいっきに真っ白になりました。 |
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サンタクロースの国は今、
クリスマスプレゼントの準備で大忙しじゃ。
なにしろ、世界中へプレゼントを運ぶんじゃからな。
なっちゃんはどんなプレゼントをお望みかな?
サンタクロースの国、特製クッキーはどうじゃ。
もみの樹の形をしていて、
それはそれはおいしいクッキーじゃよ。 |
なっちゃんはやっぱりそうかと思いました。
これは最近、近所にできたケーキ屋の、
ダイレクトメールに違いありません。
でも手紙の文章はまだまだ続きます。
プレゼントの用意ができると、
こんどはトナカイたちの準備をしなきゃならん。
金の鈴がついたひもを、一頭一頭つけていくんじゃ。
これがあの有名な
「ジングルベル」という曲になるんじゃよ。 |
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なっちゃんは、信じられない、と思いました。
サンタクロースなんて架空の人物で、
そんな話はとっくに卒業したはずなのに・・・
でも手紙には・・・
サンタクロースなんているもんか、
と思っておるじゃろう。
サンタクロースを見たかったら、
クリスマスイブにサンタクロースの国にくるとよい。
世界中の国々に飛び立つサンタクロースのソリを、
一般公開しておる。 |
なっちゃんは、またわからなくなりました。
どうやらこれはケーキ屋どころではなさそうです。
もしかするとフライドチキンの店かもしれない!?
なっちゃんの脳裏に、小太りで、
めがねをかけ、いつもニコニコして町角に立っている、
とあるおじいさんの姿がうかびました。
わしはみんなの視線を浴びながらソリに乗り込む。
まるでスターになったきぶんじゃ。あたりは大騒ぎさ。
みんなの寝顔を見るのもいいが、
幸せそうな笑顔を見るのは、
もっといいもんじゃよ。 |
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なっちゃんはちょっとばかり想像してみました。
もし自分がサンタクロースの国に行けたら!
なんてわくわくする光景なのでしょう。
そうか、これは旅行会社のパンフレットなんだ!?
『冬休みはスキーをかねてサンタクロースの国へ!!』
こんなキャッチコピーがうかびました。
みんながわしに手をふってくれておる。
いよいよ出発じゃ。忘れ物はないかな? |
それからわしは、トナカイたちに、
「さあ、行こう!」と声をかける。
するとそりはあっというまに空の上。
空気は冷たいが、とてもよい気持ちじゃ。
いちど乗せてやりたいくらいじゃよ。
この手紙は航空会社のパンフレットかもしれない!?
と なっちゃんは考えました。
北欧の空を遊覧飛行する会社なのです。
でも、なっちゃんは高いところはちょっと苦手です。 |
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めざす家に到着すると、さあ仕事じゃ。
エントツから、といいたいところじゃが、
近頃はエントツのない家が多いから大変じゃ。
なんとか家に入りプレゼントを置いたら、
すぐ次の子の家にいかなきゃならん。
プレゼントのリストは、
子供たちの名前でいっぱいじゃ。
こんどは警備会社のパンフレットかな?
と なっちゃんは思いました。
『サンタクロースも入れない防犯装置』じゃ、
サンタクロースがかわいそうです。 |
目のまわるような夜を過ごして、
クリスマスの朝に帰ってくるころは、
もうへとへとじゃが気分はそう快じゃ。
この一夜のために、一年を過ごしておるからな。
わしは妻に子供たちの様子を話してやる。
あの子は今年もいい子にしておったよ、
というと、妻もとても嬉しそうじゃ。
そうそう、わしは なっちゃんの、子供のときの
寝顔を見たこともあるんじゃよ。
結婚案内のパンフレットだったのか、
と なっちゃんは思いました。
でもサンタクロースにもおくさんがいるなんて! |
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クリスマスの前には、
たくさんのおもちゃを作る仕事がわしを待っておる。
家では、一日中にぎやかな音がしているが、
それはおもちゃを作る音なんじゃ。
こんどは隣町にできた大きなおもちゃやさんかな?
と なっちゃんは考えました。
そして子供のころ、目が覚めると、
きまって枕元に置かれていた
プレゼントのことを思いうかべました。
昨夜までなかったおもちゃが、朝そこにあるのは、
とても不思議で、魔法のようでした。 |
なっちゃん、
おまえさんはもうおもちゃで遊ぶ子供ではないが、
今回のクリスマスには、
特別にプレゼントをあげることにしよう。
はてさて、何だと思うかね?
この手紙を最後まで読んでくれればわかるが、
それはまだ秘密じゃ。 |
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そろそろたくさんのプレゼントが、
きれいに包まれて、いろんな国に旅立つところじゃ。
サンタクロースのプレゼントというもんは、
ただおもちゃを包んでいるだけではないぞ。
その中には、
夢だの、希望だの、感謝だの、愛情だのといった
気持ちがいっぱいつまっとる。
子供たちは、プレゼントをあけたとき、
その気持ちも一緒に受取ることになるんじゃ。
もちろん、なっちゃんや
宮沢賢治と、森鴎外と、川端康成への
プレゼントにも入っておるとも。 |
さあ、いよいよ出発じゃ。
わしはおなじみの赤い服を着る。
北極の空の凍るような寒さも気にならんような、
完全防寒仕様じゃ。
プレゼントをつめた大きな袋をソリに乗せ、
たくさんの子供たちに会えるのももうすぐじゃ。
外はもう、しんしんと雪がふっておる。
なっちゃん、おまえさんへのプレゼントは、
お父さん・お母さんにあずけておいた。
ま、楽しみにしておれ。 |
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わしは空をひとっ飛び。
ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ、アジア、そして
愛媛県 松山市にもプレゼントを届けにいくぞ。
プレゼントを待っとる子供たちは世界中におるからな。
そうじゃ、忘れておった。
わしがこんな手紙を書いたのは、理由がある。
プレゼントが無事おまえさんへ届くには、
ひとつ条件があるからなんじゃ。
それはクリスマスの朝に、ひと言こういえばよい。
つけくわえるなら、できるだけ明るく、楽しくやってくれ。
なっちゃんは、
いそいで最後の紙をめくりました。
そこには・・・ |
メリークリスマス!
なっちゃんは、
宮沢賢治と、森鴎外と、川端康成への
プレゼントを選びにコートをはおると、
楽しそうに出かけて行きました。
ポケットには、
サンタクロースからの手紙が入っています・・・ |
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